【鳥人間】エポキシ樹脂の硬化を早めるには!
人力飛行機の各部品の接着にはエポキシ樹脂を用いることが多いかと思います。
エポキシ樹脂で多く見られるのは2液混合型。主剤と硬化剤の2つを混ぜて、部品に塗布し、しばらく待てば接着!というもの。
しかし接着の時間は夏場であれば数時間で済むものの、冬場は数日かかる場合も…。しかも基本的に製作期間は冬場ですよね。
硬化を待っている間は次の工程にも進めず、その日の作業が終わりになってしまうと納期に遅れが出てしまうことも。
そこで今回は硬化時間を早める自分なりの方法を書いていきます。方法だけ確認したい方は途中過程はすっ飛ばして下さい!
2-1.ガラス転移温度とそれによる変性の理解
エポキシ樹脂に限らず他の樹脂やプラスチックまで、機体には多くの高分子が使われています。高分子は加温または冷却すると性質が変化します。融点もその一例ですが非晶性or結晶性高分子を急冷した場合は融点は観測されません。すべての高分子に存在するのがガラス転移温度(Tg)です。
2-2.Tgとは
高分子鎖のセグメント(繰り返し単位)がミクロブラウン運動を起こす温度のこと。ミクロブラウン運動は高分子鎖が重心位置をそのままにして形を変える運動です。このTgを境にして熱膨張係数・熱容量・弾性・粘性・誘電率・屈折率など様々な値が変化します。
一番わかりやすい例がチューインガムです。室温では固くてもろいガラス状であるが、口に入れると温度が上がり、Tgを超えてゴム状で強靭になるというものです。
また、Tgはその高分子固有の値を取ります。
2-3.Tgによって説明できる現象
(FRP/CFRP/フレーム)班でよく陥るのが樹脂の硬化時間を待っている間次の作業に進めない!というものです。しかし硬化時間は実は短縮できます(勿論物性は変わるので場所に応じて…ですが)。
硬化時間を短縮する方法
①硬化時間の短い樹脂を使う。
一番手っ取り早い方法です。Z-1でも50分硬化剤を使うのではなく20分硬化剤を使えば可使時間も早まりますが硬化時間は短くなります。クイック5を使えばもっと楽です。しかし一般的に硬化時間が早まれば強度は落ちるので注意してください。
②反応を促進するために熱を加える。
これもよく行います。対象物を袋に入れてドライヤーで30分程60-80℃キープすればz-1も硬化します。また、硬化後に60℃を2時間程度維持すると強度が増すそうです。しかし温度が高過ぎると(100℃とか)歪みが生じたり、酷い時はふにゃふにゃになったりすることがあります。この現象はTgによるものです。
Tgよりも高い温度で高分子はゴム状で強靭になる(強度は下がる)。
つまり加熱で反応促進は出来るのですがガラス転移温度を超えてはいけないのです(勿論融点もそうですが、一般にTg<Tmなので気にする必要はないです) 。
③硬化促進剤を併用する。
硬化促進剤は主剤・硬化剤と併用することで樹脂の硬化を早めることが出来る、とても素晴らしいものです。更に強度が増すものもあります。しかしその硬化促進剤の対象となる樹脂以外では意味がありません。つまり「z-1に使えるよ!」って書いてある促進剤でなければ、構造がわからない限り使わない方がいいです。もちろんその場合はz-1以外の対象となるエポキシ樹脂を使えばいいだけのことです。
以上が硬化を早める方法の中でも簡単に出来ることです。しかし時間に余裕がある時は説明書に従って待った方が良いですね。物性の変動もありませんので…
閲覧ありがとうございました。