【鳥人間】接着目的の樹脂の検討3
前回からの続きです。
【鳥人間】接着目的の樹脂の検討1 - razutan’s blog
【鳥人間】接着目的の樹脂の検討2 - razutan’s blog
1-5.固体の表面張力と濡れ性
ここまで色々議論してきましたが、要するに大切なことは
①接着力を高めるには良く濡らすこと
②濡れ性を向上するということは接触角を0度に近づけるということ
です。
ここで固体の表面張力について考えます。難しいことは置いておいて、簡単に書こうと思いますので若干間違った解釈になるかもしれません。
固体の表面張力は完全に濡れる(cosθ=1)のときのγ_Lとして表記できます。これを臨界表面張力γ_C とも言いますが、これは素材固有の値です。例えばテフロンでは18mNm^(-1),ナイロン66では45mNm^(-1)くらいの値をとります。
ここで先程の付着濡れに関する式を見てみると
ΔG_a=-γ_LV(1+cosθ)
となっています。cosθ=1のときのγ_L をγ_Cと記述すれば
ΔG_a=-2γ_c
となり、ΔGaはγ_Cにのみ依ります。テフロンのγ_C<ナイロン66のγ_Cであるのでテフロンの方がΔGaが大きくなってしまう、つまり濡れにくいことを表します。自然現象に基づいて理論を構築しているので当たり前ではありますが、こんな風にして理解できます。
1-6.自作CFRP板界面の付着濡れ
・ΔG_a=-2γ_c
・γ_Cは素材固有の値
炭素繊維や硬化したエポキシ樹脂においてもγ_Cは勿論存在します。硬化エポキシ樹脂のγ_Cは炭素繊維のγ_Cに比べて小さく、したがって樹脂が界面に存在している場合は濡れ性が低下します。
⇛濡れ性が低下するということは、接着力が低下する
⇛自作CFRP板でピールクロスを用いない場合、ヤスリがけしないで接着しようとしてもうまく付かない!
この理由を説明するとここまで面倒くさくなります。。。。
だるいので現象だけ覚えましょう!
【まとめ】
接着力を向上させたいのであれば加工の段階では濡れ性を上げれば良いです。接着剤を変えて凝縮力を上げるのも勿論アリです。後者の場合はサーフィンボード修理ブログなどを読んでオススメ樹脂を調べるか、構造が既知であれば有機合成の知識から定性的に議論していけるかと思います。
一先ずはここまでで締めようかと思います。閲覧ありがとうございました。
【鳥人間】接着目的の樹脂の検討2
前回に続いて、人力飛行機における接着目的の樹脂の検討です。
【鳥人間】接着目的の樹脂の検討1 - razutan’s blog
今回は接着分子と被着体が密接であることを議論する上で必要な考え方である"濡れ性"について書いていこうと思います。
1-2.濡れとは
固気界面が固液界面に置き換わる現象。付着濡れ、拡張濡れ、浸透濡れ、浸漬濡れなどがあるが平衡状態であり(他サイト参考)、後述するYoungの式で記述できる付着濡れ、浸漬濡れだけ考えれば良いと思います。また、CFRP板の濡れを議論する場合は浸漬濡れは無視してもいいかもしれないです。
1-3.接触角と固体の表面張力からどれだけ濡れるかを判断(定性的)
液滴の形状と接触角の大きさについて見ていきます。
接触角とは、wikipediaを見てみると「固体表面が液体及び気体と接触しているとき、この3相の接触する境界線において液体面が固体面と成す角度を接触角(contact angle)といい、接触角が90°以下の状態をぬれると呼ぶ」と書いてありました。
θを接触角とすると…
・θ=0°・・・液体は固体を完全に濡らし、表面全体に広がる状態で理想条件。
・0<θ<90°・・・程よく濡れている状態。
・θ>90°・・・液体は全く固体表面に広がらず、表面を濡らすことはない。
・θ=180°・・・一点で接している状態。これも理想条件。
⇛θが小さいほど濡れ性向上!また、θ=0°が最も理想。
1-4.接触角と固体の表面張力からどれだけ濡れるかを判断(定量的)
接触角が小さいほど濡れる(接着分子と被着体が密接になりやすい)ことは理解できたかと思います。この現象についてもう少し理論立てしていこうと思います。
付着濡れ
ΔG_a=γ_SL-(γ_SV+γ_LV)
ここでγ:表面張力を表し、ΔG_aが小さくなるほど濡れ性は向上します(より濡れる)。
また液体の表面張力γについて
…
と述べてもアレなので途中過程は全てカットで!
最終的に…
ΔG_a=-γ_LV(1+cosθ)
⇛θが小さいほどΔGaは小さくなり、安定するので濡れ性向上!θ=0°が最も理想であることもわかる。
今回はここまで。次回はここまでを通して、自作CFRP板界面の付着濡れについて書いていきます。
【鳥人間】接着目的の樹脂の検討1
最近鳥人間が放映されましたので、それにちなんで。
人力飛行機の製作における接着目的の樹脂について比較をしていました。
界隈で有名である樹脂といえばエポキシ樹脂Z-1シリーズだと思います。
それ以外の市販樹脂も様々な種類がありますが、何をどのように比較すれば良いのか、自分なりの考え方を書いていきます…
1.接着力
エポキシ樹脂の接着面は特に弱く、パテやクロスの補強が必須です。また、CFRP製の後縁材にそのまま樹脂を塗って貼ったところですぐに剥がれてしまいますよね。それでは接着力を強くするにはどうしたらよいのでしょうか。
接着面を引き剥がそうとする場合、
①被着剤の破断 ②接着剤の破断 ③接着界面の剥離
の3つのケースが考えられます。
①について、CFRP板同士の接着の場合は複合材料に問題があるということです。これに関しては今回は省略します。
②について、接着剤であるエポキシ樹脂と硬化剤による硬化反応時に形成される結合が問題です。
接着破壊のうち①や②の破断は、それぞれの凝縮力の限度が超えたときに起こります。
③については接着力が相対的に弱いことから発生します。この接着力は凝縮力と界面接着力(被着剤と接着成分の相互作用)のバランスで決まりますが、接着成分の凝縮力については②と議論することは変わらないので、まずは理解しやすい界面接着力について。
被着剤と接着成分の相互作用には機械的結合・物理的結合・化学的結合があるといわれています。
1-1.3つの結合の違い
↑にて述べた通り、界面接着力には3つの結合が関与します。
①機械的結合・・・接着剤の成分が被着剤の凹凸に入り込んで硬化。アンカー効果…?
②物理的結合・・・接着剤の成分と被着体表面を構成している分子がファンデルワールス力によって引き合うことによりできる。接着分子が被着体に近接することが大切。
③化学的結合・・・接着剤分子と被着体分子が化学反応を起こして結合。共有結合というよりも水素結合と考えた方が妥当。
接着力の発現はこれらの3つの結合が独立していると考えるのではなく、複合的に作用していると考えると良いです(らしいです)。
特に、②と③では接着剤と被着剤の相互作用を高めることが重要で、つまりは被着体の表面のみを、その接着剤との親和性を向上させるようにすることが大切です。
⇒接着分子と被着体が密接にしたい
⇒濡れ性を高める!!
今日はここまで。次回は接着分子と被着体を密接であることを議論する上でかかせない濡れ性についてからです。